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消滅可能性のある自治体

 人口戦略会議(議長:三村明夫、副議長:増田寛也)は、「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)に基づき、人口から見た全国の地方自治体の「持続可能性」についての分析を行い、その結果を令和6年7月に公表している。

 「消滅する可能性のある自治体は744」との分析結果は衝撃をもって報じられた。

 この分析は、「若年(20~39 歳)女性人口が減少しつづける限り、出生数は低下し、人口減少に歯止めがかからない」という分析仮説に基づいている。
 若年女性人口が 2020 年から 2050 年までの 30 年間で 50%以上減少する自治体は、その先「最終的には消滅する可能性が高い」と推測し、そのような自治体を「消滅可能性自治体」としている。

 具体的には、若年女性人口について、社会増減(=国内外地域との人口移動)を加味した「移動仮定」での推計結果における減少率[3区分](下表縦軸)と封鎖人口(地域間の移動がゼロを仮定=人口変動要因は自然増減のみ)での推計結果における減少率[3区分](下表横軸)を用いて、地域(市町村単位)を9タイプに分類している。

 

  分析結果:人口特性別9分類

 

● 自立持続可能性自治体(A)

   移動仮定、封鎖人口ともに若年女性人口の減少率が 20%未満であり、
   100 年後も 若年女性が 5 割近く残存し、持続可能性が高いと考えられる自治

●  ブラックホール自治体(B-①、B-②)
   移動仮定での減少率 50%未満、封鎖人口での減少率 50%以上であり
   当該地域の出生率は低いが、人口の増加分を他地域からの流入に依存している。
   ことから「ブラックホール自治体」と名付けられている

●  消滅可能性自治体(C-①、C-②、C-③)
    移動仮定での減少率が 50%以上であり、「最終的には消滅する可能性が高い」
   とされる自治

● その他の自治体(D-①、D-②、D-③)
   上記A~Cの分類以外
  

 上記9分類を表の色分けで日本地図にしてみた(下図)。
 (QGISというフリーのGISソフトで描いた)
 自立持続可能性自治体は県単位でみると沖縄が最も多い。
 ブラックホール自治体は東京23区内のうちの16区と大阪市京都市。あとは千葉、埼玉、北海道に点在している。
 消滅可能性のある自治体については、C3分類の23自治体は全国に点在している。C2分類の545自治体は東北、北海道に多い。また、南海トラフ地震の被害想定地域と重なる紀伊半島や四国の中央構造線南側にもC2分類やC1分類に該当する自治体が多い。

 人口減少、少子高齢化が進む中で、自治体の行財政基盤確立に向け実施された市町村の合併再編(平成の大合併)によって、市町村数は約3,000から1,700に減少している。しかし、この分析結果によれば、将来の自立・持続可能性が揺らいでいる自治体はかなり多い。

 人口減少、少子高齢化が急速に進む中で、社会を中長期的にどのような方向に向けて形成していくのか、政府は「国土形成計画(第3次)」、「デジタル田園都市国家構想基本方針 概要」、「まち・ひと・しごと創生基本方針2021」(地方創生)などの方針・施策を打ち出している。

 

●「国土形成計画(全国計画)概要」 
  https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001621774.pdf

●「デジタル田園都市国家構想基本方針 概要」
  https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/pdf/20220607_gaiyou.pdf

●「まち・ひと・しごと創生基本方針2021」(地方創生)
  https://www.chisou.go.jp/sousei/info/pdf/r03-6-18-kihonhousin2021gaiyou.pdf

 

 どの資料をみても、描かれているビジョンはきれいだ。
 むしろきれいすぎるぐらいの目論見書。

 肝心なことは、実現することでQuality of Lifeが向上するというOutcome。